ウクライナ 奪われた日常を知って
「ウクライナ 時の記録 写真展 ―かつて、ここに笑顔があった。」展残り5日となりました。本日付で朝日新聞に掲載されました。全文をご紹介します。

『長崎の被爆者の男性とウクライナ出身の女性が撮影した、ロシアによる軍事侵攻前後のウクライナの町並みを写した展示が、ナガサキピースミュージアム(長崎市松が枝町)で開かれている。日常と非日常との対比を表現したもので、戦争の悲惨さや非人道性を訴えている。
朝日新聞(令和8年1月21日)
写真は計60点。侵攻前の2012年に撮影されたものと、25年に撮影されたものを並べて展示。観光名所の写真では、侵攻前のにぎわう人々の様子が並び、定点から日常の明暗が伝わる。
企画したのは、被爆者で長崎市の小川忠義さん(81)。小川さんは長崎に原爆が投下された8月9日の日常を長年撮影し、国内外から寄せられる9日の慰霊や平和の思いがこめられた写真を集めて写真展を開いている。12年にウクライナの首都キーウなどを訪れ町並みを撮影していた。
25年の町並みを撮影したのは、長崎の留学生だったストラシコ・アナスタシアさん(27)。小川さんは昨年8月に開催した写真展で出会い親交を深めた。現在は会社員で兵庫県で暮らすアナスタシアさんは昨年秋、家族に会うために帰省した際、小川さんが写真を撮った場所などを歩き、祖国のリアルを切り取った。
小川さんは、アナスタシアさんが撮影した写真や現地の様子を耳にして衝撃を受けた。見覚えのある景色の変わりぶりに、悲しさや怒りが込み上げた。
小川さんは「侵攻から4年が経ち、ウクライナに対する関心が薄れていないか危機感がある」とし、写真を通じて「戦争の愚かさ、悲惨さを体感し平和について考えて欲しい」と話す。
アナスタシアさんは写真展が開かれている10日、約50人を前に講演に臨んだ。実家はウクライナ中部ドニプロで、今もミサイルやドローン攻撃による被害で犠牲者がやまないことや、避難を知らせるサイレンが鳴り響く現状を明らかにした。
アナスタシアさんは「侵攻前のウクライナは落ち着いた美しい町だった」と悔しさをにじませ、「この事実から目をそらさないでほしい。武力でねじ伏せる大国のロシアの恐怖の中でウクライナの人は生きている。侵攻をやめるよう日本からも声を上げてほしい」と訴えた。
翌11日。ウクライナ出身で島原市に住むグリニェンコ・オレナさん(42)が夫と子ども2人を連れて写真展に足を運んだ。
オレナさんは11年に来日し、ネイリストとして同市内で店を構える。戦線に近い北東部スムイで暮らす父と姉の家族もロシアからの攻撃を受け、不安や緊張を抱えた生活を強いられている。
初対面だが、2人は抱き合った。故郷への思いを母国語で交わした。オレナさんは「ウクライナのニュースが少なくなった。写真展で改めてウクライナのことを知ってほしい」と話した。
写真展は25日まで。午前10時~午後5時30分(最終日は午後2時まで)。入場無料。
(池田良、エリアリポーター 松下英爾)』